自殺のリスクが高い人の支援=臨床自殺予防学とその実行者が必要
自殺のリスクが高い人の支援は、臨床心理学とは異なるスキルのある人が介入しないと、自殺し
かけている人を救済することは難しいようです。まさに自殺せんとする人の、心理をよく理解でき
て、焦燥感を緩和するノウハウ、極端に狭窄に陥った観念を変えるノウハウを持ち、種々の公的機
関などに積極的な働きかけの行動ができる人格(私は不向きですが)および、支援のネットワーク。そういう方法を研究する臨
床自殺(予防)学。
校長や先生や父兄に遠慮、きがねするような内向的な傾向のカウンセラーではつとまらな
い。また、契約関係に縛られて、校長や先生に、強い指導、勧告をできないような弱者の立場にあ
る人だけでも、機能しない「いじめ」「自殺」があるでしょう。学校カウンセラーだけでは、限界
がある。県に、1か所は、臨床自殺学のエキスパートを育成すべきでしょう。数名のチームで動く。死にたいということ
をもらす子どもがいたら、すぐ、連絡する仕組みがほしい。自殺は救える問題です。
うつ病には、希死念慮、自殺念慮があることが多い。自殺のリスクを低、中、高に分けるとすれ
ば、低、中は、通常のうつ病の治療法(臨床心理学)で行なう。しかし、自殺のリスクが高い患者には、別の配慮
が必要である(臨床自殺予防学)。理論だけ、評論だけではなくて、実際に、ノウハウを持ち、行動する人たちのグループ。
自殺予防の文献によれば、次のような対策が考えられる。
(A)社会的な支援対策
背景となる問題の解決とか、焦燥感を強めている環境を変えて、苦悩を緩和する対策をとること
によって、自殺への衝動を緩和する。
- 重要な人物の協力を得る=配偶者、親、子などの家族を巻き込んで患者の焦燥感を弱めるため
の協力を得る。学生の場合には、教師、教育委員などの協力を得る。
- 環境を変えることを選択肢の一つとする。
- 他の支援のネットワークの協力により、患者の問題にかかわる領域のコンサルテーションを提
供する。たとえば、育児、自己破産、介護、生活保護などの知識や現実的支援。
- 自殺のリスクが高い人には、治療者が、一人で処理しようとしてはならない。2人以上の治療
者で応対して、さらに、家族などを巻き込む。プライバシーの保護は変更される。リスクの高い患
者の場合、誰にも言わないでという約束はできない。家族、学校関係者に通知して、対策をすすめ
る。特に、「これから自殺する」などの電話があった場合、警察に連絡して、緊急にひきとめをす
る。
- 地域の資源を利用する。メンタルな問題以外の支援が必要であれば、地域の公的支援機関、N
POなどの支援を求める。
- 家族と協議して、入院することも考慮する。病院スタッフの管理下におく。そして、薬物療法だけでなく、自殺念慮緩和のカウンセリングを行なう。
(B)心理療法的な対策
重要な点は、(1)焦燥感と(2)自殺しかないという極端な認知である。これを緩和することが焦点
となる。
- 自殺の衝動は、一過性であり、生きたいという気持ちもあるので、生きる方向へ、行動する。
- 患者の問題と希望は何かを聞きだして、できるだけ、希望を満たす方向に行動する。
- 現実的な選択肢のリスト作成、優先順位づけ、その実行。
種々の選択肢を提案する。自殺念慮の強い人は、視野の狭窄におちいり、対策を考える力がおち
ているので、種々の選択肢を治療者が提案して、患者の希望する優先順位をつける。
- 家族の対応にも、問題があることがある。態度の変更を強く働きかける。
- 患者の焦燥感をやわらげる対策を取る。痛みをやわらげる、満たされない要求を満たす、実行
可能な対策のリストを作る、希望を与える、時間をかせぐ、傾聴する、他者を巻き込む、実行でき
ないようにする、などである。
- いじめの場合、その後も、加害されないように、支援することを確約し、実際に見守る。
言うのは、簡単だが、するのは難しい。考えて、言うのは、学者、評論家ですが、これは、実際行動できる人でないといけない。アメリカでは、すでに「自殺予防学」の本が出版されている。日本では、それを実践できる臨床カウンセラーが、多くはないでしょう。育成が必要です。